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『ラスト・フェニックス――不死殺しの王女――』感想

 

ラスト・フェニックス  ─不死殺しの王女─ (角川スニーカー文庫)

ラスト・フェニックス ─不死殺しの王女─ (角川スニーカー文庫)

 

 

読書メーターにも投稿したのですが、書き足りない気分だったのでこちらにも。

(以下ネタバレ有り)

 

シャロンが可愛かったなあ…。「毒姫」と疎まれながらも健気に生きていて。そんなシャロンがセロに対して次第に心を開いていく様子とか、照れ隠ししようとするんだけど全然隠せてない感じとかかわいかったです!(確かシチュー作ってるとこ)

セロはシャロンにぴったりの騎士様って感じ。庶民の身分から双剣の技でのし上がったことから、周囲に疎まれているって言うのはシャロンと同じで。周囲の評判に流されずシャロンの境遇を理解して、何度でも助けようとして。シャロンが工事現場で無理難題を吹っかけられた時に代わりにやっちゃうシーンとかかっこよかった! 決闘で結局ヴェリウスを倒しちゃうシーンはスカッとしました。その後のシャロンの「もうっ!」って感じが、怒ってるんだけど全然怒ってなくてむしろ嬉しいみたいな感じがかわいくてかわいくて(ぐへへ)

かっこいいといえばシャロンも。王女なのに暗殺者倒しちゃうとか。登場シーンp.15の絵がとてもかっこよくて好きです。最初は文様のこともあってミステリアスな感じさえしたのに、話してみると普通の女の子なんだもんなあ…。表紙めくってすぐの井戸汲みしてるシャロンも好き。まだ心を開いてない澄ました感じというか。それと最後のページの絵の優しげな眼差しとを比べると対照的でしみじみします。

イリアもかっこいいなー。フェニックスの王女として、同胞を封じる……大きな信念のもとで動いているというか。個人的にはテイルズオブエクシリアのミラのイメージに近い。声も沢代みゆきさんでイメージしてました。

 

いやー続編ほしい! 綺麗な終わり方でしたけど、いろんな国を旅して楽しんでるシャロンの姿とかみたいし、セロの双剣捌きももっとみたい。二人の進展も! たぶんこの2人をイリアの立場から見てたらすっごくもどかしいんだろうなあ…。しかし、いやだからこそ微笑ましいです。

 

 以下引用&感想をば。

 

 シャロンの冷めた眼差しを思い出す。余計な事をするなと、また怒られるかもしれない。それでもセロはシャロンのことが放っておけなかった。差し伸べた手を払われたとしても、差し伸べることまでやめるのは違うと思うのだ。 (p.51) 

 セロがこういう性格だからこそ、シャロンの心を開くことができたんだろう。正義感が強くて頼れる騎士様!

 

「やめて、私、あの人たちと一緒になりたくないっ!!」

 

「ひどいことをされたと思うよ。恨んでいないかって言われたら、ちゃんと答える自信ない……。でも、もう過ぎたことなの。私はこの体で生きていくって、どんなことがあっても生きていくって決めたから。あの人たちのように誰かを踏み台にしないで生きていこうって。それが私の、せめてもの抵抗だから」(p.146)

  シャロンの健気さを思い知らされる台詞。たとえ自分が何度も実験材料にされようと、そのせいでずっと周囲から疎まれることになっても、それでも憎しみに染まらない……。こんなこと言われたら守ってあげるしかないよね、セロくん!

 序盤の「私の使った水が混ざると死ぬかもしれないって、みんなが怖がるから」(p.34)もやられたなあ。”一人としてシャロンを思いやる者はいない。けれど、シャロンは人を思いやる心を決して忘れなかった”(p.264)。本当にやさしい子……。

 

「再生能力を持てば、誰もがお前を恐れ、遠ざけるだろう。忌み嫌うだろう。親しい者の命すら、お前は奪う。お前はもう誰のそばにもいられない。その孤独も私は与えねばならない。それでも良いか」

「構わない。頼む。」

 セロは即答した。瞳を逸らさずに、真っ直ぐにイリアを見つめ返す。

 イリアの言いたいことは伝わった。すべてを理解して、その上で出した結論だ。軽々しく決めたことではないと、視線に意志を込める。

誰からも恐れられ、遠ざけられ、忌み嫌われ、それでも笑って生きてきたヤツを俺は知っている。そんなことでためらっていたら、そいつに顔向けできない。イリア。お前もわかるはずだ」(p.263)

  イリアの瞳が大きく揺れた。私の瞳もきっと大きく揺れていた。シャロンの強さと、セロがシャロンを守ろうとする決意の固さを思い知らされた。たぶんこのシーンは何年経っても忘れないと思う。そのくらい印象的だったシーン。

 

 こっからちょっと長い引用。

「逃げろ! こいつは俺が倒す! 命に代えてもお前を守る! だから」

「私は生きていくのに、どうしてセロは死のうとするのっ!!」

 全身を振り絞った叫び声が、セロの言葉をかき消した。

 シャロンが柳眉を逆立てる。そこにあるのは純粋な怒りだ。大きな目に涙を浮かべ、彼女はセロを強く詰った。

「あのとき顔を見てわかった! セロは帰ってくるつもりがないって! どうして『さよなら』なんて言うの!? 『帰ってくる』って、どうして言ってくれなかったの!?」

 まっすぐな言葉がセロの胸に突き刺さる。こぼれ落ちる大粒の涙を、シャロンは拭いもしない。ぼろぼろと泣きながら、なおもセロへと歩み寄る。

「セロまで私を一人にするの……? どうして? どうしてよっ!?」

 セロは声もなく、その場に立ち尽くした。

 真っ赤に腫れたシャロンの目が痛々しくてたまらない。胸がひどく締め付けられて息ができない。ただ、シャロンの姿が見える。その声が聞こえる。

 今にも泣き崩れそうなのに、それでも必死に前を向き、シャロンはセロに手を伸ばした。足を取られ、再び地面に倒れる。泥に汚れながらもセロを見た顔は、何よりも気高く、美しかった。

 歯を食いしばり、身を切るようにしてシャロンは叫ぶ。

「私を守るのなら生きて守って! セロ自身も含めてすべてを守ってよ! 私だけが生き残っても。セロがいなきゃ、何の意味もないの! だから、お願い!」

 その一言が、セロの世界を一変させた。

「死なないで! セロ!」

 どくんっ、と鼓動が大きく脈打った。体の奥底に、これまでにない熱が生じる。それは力強くも温かく、セロの魂を包み込んで揺さぶった。

 

 

「すまない、シャロン

 

「やっとわかった。お前を守るという、本当の意味が」

 

 

「俺はお前を守る。お前の大切なものも、すべて。俺やイリアが傷つけば、お前は心を痛めてくれたな。ならば、それも含めて守ってやる」

 

 

シャロン。お前の心も、俺は守り通してみせる!」

 

 

 

「俺は生きる。生きて、お前を守る! 絶対に!!」

 

 ここはもう、何も言わずに余韻に浸りたい。そんなシーンです……。といいつつ書くんですけど

 

 「あのとき顔を見て~」ってどこのページだっけと思って見返したらp.279の絵がぐさっときた。背中を向けて去っていくセロと、それを引き留めようとして、涙ながらに必死に手を伸ばすシャロン。このシャロンの表情と、描かれていないはずのセロの表情が悲痛すぎて。シャロンにとってセロはやっとできた友達で、そんな彼を失うなんてシャロンには辛すぎて。セロのことが大事だからこそ、湧き上がってくる「純粋な怒り」。それをそのままぶつけることで伝わる想いもあるんだなあ…って。

 

「それに、放っておいたらフェニックスは私を殺しにくるんでしょ?」

 シャロンがおどけたように小首をかしげた。(p.311)

  何気ないワンシーンなんだけど、ここがとても印象に残ってしまって。このセリフだけ聞くとすごいこと言ってるなと思うんだけど、こんなことすらさらっと言えるほどシャロンは前を見ているということなんだと思う。シャロン強い子かわいい子。

 ああほんっとに最後のページのシャロンかわいいな…。

 

 

あとがき

 久しぶりに物語本の感想を書きました。

 ふと『いなくなれ、群青』のことを思い出して、自分が昔書いた記事を見返したらいろいろ思い出せて。やっぱり感想や好きだったシーンを書いて残しておくといいなと思ったのです。それに今の自分にとっては、当時の自分がそれだけの時間をひとつの作品にかけたのだという事実が嬉しかった。

 しばらくは読書メーターメイン&こっちサブでやっていこうかと思います。