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『狼と香辛料』1巻 感想

狼と香辛料 (電撃文庫)

「わっちは神と呼ばれていたがよ。わっちゃあホロ以外の何者でもない」

人生で2番目に読んだラノベの感想ですー。ホロ(と主人公のロレンス)がかわいかった!

ホロはさすが神だけあって名言をいろいろ残してくれているので思考が進みます。やっぱり思考のトリガーを引かれる作品は感想書きたくなりますね。

  

【嘘を調べるとき】

「嘘をつく時、大事なのはその嘘の内容ではなく、なぜ嘘をつくかというその状況じゃ」

――1・p.91・ホロ

 ホロとロレンスが、儲け話を持ち掛けてきたゼーレンの話について語るシーン。相手が嘘を言っているかどうかってなんとなくわかることがある。その時に「どこがどう嘘なのか?」と考えるより、「何故彼は嘘をつかなければならなかった/つこうとしたのか?」「どんな状況が彼に嘘をつかせたのか?」を考えた方がいいと。背景を考えれば嘘の内容は自然と見えてくるのかもね。

 

【禁欲は何も生まない】

「食欲は多くのものを失うが、禁欲が何かを生み出すということもない」
――1・p.118・ホロ

ホロがロレンスにねだった林檎をほおばりながら言った言葉。 

「食欲」は何欲にしても成り立つだろう。お金がもったいないから、貯金しなきゃ、といって使わずにいるとお金を失うことはないけど、それは言い換えれば幸福を得る機会を失っているということ。理由のない我慢は自分を苦しめるだけ。こころのKみたいな。

 

【賢きとは】

「ただし、絶対毛皮のときにできるとは限らんよ? ぬしはその道の人間じゃ。わっちに口出しする余地ないかもしれん」
「殊勝じゃないか」
「賢きとは己を知ること也」
――1・p.119・ホロ

自分の限界を知ることは必要なのだろう。特に人に口出しするときは。相手の能力や人格とは別に、相手がそれまで費やしてきた時間にも敬意を払わなければいけない。時間が蓄積を作るのだから。

 

【だまされた時】

「だまされた時に怒っているようじゃ話になりんせん。そんな方法もあるのかと感心してこそ一人前じゃ」

――1・p.134・ホロ

ただしこれは自分がだまされた時専用ね。自分が相手をだますときの言い訳に使ったり、だまされた人を慰めるときに言う言葉ではない。「感心」というのは駆け引きがつきものの商人だからこそしっくりくる言葉だが、私達の生活で言えば「次は騙されないように」という事だったり、文字通り「こんな言い方もあるのか」と感心し自分の表現の幅や視点を広げることだったりする。

 

【言葉が効かないとき・突風】

「もう、目を覚ましても誰もおらんのはいやじゃ……。一人は飽いた。一人は寒い。一人は……寂しい」
 そんなホロの感情の吐露に、ロレンスはあいずちを打たずただ抱きしめて頭をなでてやるだけだった。これだけ取り乱していれば何を言っても耳には届かないだろうと思ったし、何より的確な言葉を言えるとも思わなかった。
 ロレンスも御者台の上や、初めて訪れた町などで突風のような寂しさに襲われることがある。
 そんな時は何をしても駄目だ。何を聞いても駄目だ。ただ何かにしがみついてその突風が過ぎ去るのを待つしかない
――1・p.206

1.「これだけ取り乱していれば何を言っても耳には届かないだろうと思った」⇒言葉で伝えようとするのが逆効果になるときもある。「的確な言葉を言えるとも思わなかった」というのは商売一筋で異性には口下手なロレンスの心情だが、自分への戒めにもなる。

2.「突風が過ぎ去るのを待つしかない」⇒感情を解決しようとするのが逆効果なこともある。解決しようとすると却って意識が対象に向いてしまう。なくそうとするより、今自分が為すべきことを集中してやっていればそのうち嫌な気持ちは過ぎ去る。cf)森田療法

 

【孤独は死に至る病

「ぬし、金稼いで店を持つんじゃろ。それに、わっちはぬしに大きな借りがあると先ほど言ったばかりじゃ。ぬしはわっちを不義理な狼にするつもりかや?」
「馬鹿を言うな。捕まれば殺されるのが目に見えてるんだぞ。そんなのが釣り合うわけないだろ。今度は俺がお前に返しきれない借りを作っちまう」
 ロレンスは声を押し殺して怒鳴ったが、対するホロは薄く微笑みながら首を横に振り、ロレンスの胸にそのか細い人差し指を軽く突き立てた。
「孤独は死に至る病じゃ。十分釣り合う」
――1・p.217
メディオ商会に追われる中、ホロが自分が囮になると言い出したシーン。
犠牲になる方の痛みは一瞬だけど、残されるものの痛みは半永久的に続く。どちらが重いとかではないけど。
SAO1巻でも似たようなことを考えた。キリトは茅場との一騎打ちの前、自分が死んだらしばらくアスナを自殺できないようにしてくれと頼むのだが、間に飛び込んできたアスナを目の前で失ってすぐ自分の浅はかさを思い知る。アスナはキリトにとってSAOの世界で生きる理由であり、クリアを目指す理由だった。そんなアスナのいない世界にもういようなんて思えない。だからこそにもならない攻撃を茅場に向けてとどめを刺される。
ホロとロレンスの関係はまだそこまでいってないにはせよ、ホロは一度ロレンスに涙を見せているから……割と心を許し合っていたんだろうとは思う。だからこそホロは自分が囮になるとか言うし、ロレンスが助けに来てくれると信じられたんだよね。(この「ロレンスが」というのが後にホロを怒らせる原因となりますが……?)
 
【ロレンスの決意】
 果たしてこちらの身の安全を確保させることができるだろうか。
 そんな不安が胸の内で渦巻いていたが、すぐにロレンスは思い直した。保証させなければならない。そして、さらにその上で利益を確保しなければならない。
 それが、行商人としての意地と、ホロが危険を冒してくれたことに報いることなのだ。
――1・p.221
一人助かったロレンスの心情。
これがね、もし「安全を保障させなければならない。それがホロの行動に報いることだ」だけだったら、まあどこにでもいる主人公。でもロレンスは「その上で利益を確保する。それが行商人としての意地」と言っている。これは一見冷たいようだけど私はこの台詞を見て「うおーーーっ!」って思ったんですよね。これは行商人であるロレンスだからこそ言える台詞。
もし利益が出なかったら、それはロレンスが損をするだけでなくミローネ商会も損をする。となれば協力を持ちかけたロレンスが商売の世界から弾かれるのは当然の帰結。すなわちロレンスの行商人としての人生は終わる。というか食い扶持がなくなる。
ロレンスは商売という道に自分の「生き様」を感じているんじゃないかな。師匠のことを尊敬しているようだし、自分は「商人として生きていくんだ」っていう決意をどっかでしてるんだろうな。そういう決意に裏打ちされた言動って私とってもときめいてしまうのですよ。
 
【自分の気持ちに気づくとき】
 今まで通りと言えば今まで通りの様子のホロのそんな言葉だったが、ロレンスはその言葉を聞いて、自分がホロの喜ぶ顔と弾んだ口調を期待していたことに気がついた。
 ホロの言うとおりに穴の下から体をどけ、ホロが下りてくるのを待ったが、その時に胸にあったのはホロに会えた喜びより、そんな声が聞けなかった失望感だった。
――1・p.255
最初は勝手に荷台に乗り込んで来て生意気なこと言ってで疎んでいた相手が、いつの間にか大切な存在になっていたことに気づく――こういう「自分の気持ちに気づく」シーンってなんかいいなーと。
ホロはホロで、ロレンスが助けに来てくれると思っていたのにロレンスが殴りこんできたわけじゃなかったことに腹を立てていた。おかげで他の人に恥ずかしいこと言ってしまったらしい。相思相愛じゃねえか!
 

【俺達は商人だ】

「まあ、ものは考えようだ。北に帰るためにはどのみち土地を去らなきゃならなかった。後ろ髪を引いてくれないなら後ろ足で砂をかけてやればいい。そっちのほうが思い切りもいいだろうしな。ただし、ただじゃ出ていかない
「俺、いや、俺達は商人だ。儲かれば何でもいい。笑うのは金が入ってから、泣くのは破産してからだ。そして、俺たちは笑うんだ
――1・p.269・ロレンス
「後ろ髪を引いてくれないなら後ろ足で砂をかけてやればいい。」こういう捉え方かっこいいと思うの。「ただじゃ出ていかない」っていうのもロレンスの商人魂が垣間見えて好き。
「俺、いや、俺達は商人だ。」ずきゅーん。
 
【ホロ、狼】
「ぬしが」
「わっちを選んでくれたことはずっと覚えておく」
「ぬしよ」
 
「もう、見ないでくりゃれ」
――1・p.299・ホロ
狼の姿を見せたらロレンスを怖がらせてしまう。狼の自分と人間のロレンスとは相容れない。それをわかっていながらロレンスを守ろうとホロは決意した。二度と会えないのに自分を犠牲にしてまで相手を守ろうというのは一見不思議かもしれないが、たぶんホロはそんなことまで考えてない。相手に対する想いが強いと、自分の利害勘定なんてすっ飛ばして相手のために行動できる。これが絆や愛の強さだ。
だからこそ私たちは、自分の犠牲を顧みない行動にその「想い」の大きさを感じて打ち震えるのではないか。
 
【ロレンスの”説得”】
 ここだ。ここでホロを思いとどまらせなければ、もう二度とホロに会えない気がした。
 しかしなんと言えばよいのか。ロレンスの脳裏にたくさんの言葉がよぎっては消えていく。
 今さらホロのことを怯えていないなどと言っても説得力などかけらもない。今だってホロの姿が怖いのだ。それでもロレンスはホロを呼び止めたい。そんな相反する気持ちの交錯をうまく表現する言葉が見つからない。
 それでもロレンスは必死に頭を動かし、ホロに笑われた少ない語彙の中で、ホロを呼び止めるための言葉を懸命に紡ぎあげた。
「お前が……破いた服、幾らすると思っているんだ」
 そして、できあがったのはそんな言葉だった。
「神だろうがなんだろうが……弁償してもらうぞ。お前が稼いだ銀貨七十枚分。あんなのじゃ足りやしない」
 できる限り、いや、半ば本気で怒ったロレンスはホロに言葉をぶつけていた。
 いかないでくれ、と頼んだところで絶対にだめだと思った。だからロレンスは、ロレンスがたとえホロの狼の姿に恐れていてもなおホロを行かせないようにするにはこれしかないと思った。
 商人の恨みは谷より深く、金の取り立ては夜空に浮かぶ月よりもしつこい。
 それを伝えるためにロレンスは憎悪を込めて叫んでいた。ホロがロレンスの前を立ち去るのを引き留めるのではない。立ち去っても無駄だということを伝えるのだ。
「俺が何年かけて稼いだ金で……買い揃えたと思っているんだ。追いかけてやる……北の森まで追いかけてやるからな!
――1・p.308・ロレンス
ここ読んで私は狼と香辛料を大好きになった。
本心をそのまま伝えるのではなく、目的を最も達成し得る言い方を選ぶ。ロレンスはどこまでも商人らしくて。
「破いた服」というのはロレンスが商談用に使っていた一張羅。ホロが表れた日に勝手に着てからずっとホロのものだった。大切な服だったとはいえ、その服をホロが破いたのはロレンスが怪我をした左手に包帯を巻いたから。そのホロに対して「憎悪込めて叫んでいた」!
でもこの言葉はしっかりホロに届いてるんだろうな。実際1巻の最後ではホロは帰ってきてくれたわけだし。こういうね、「メタメッセージで通じ合える関係」って素晴らしいと思うの。
 
あとがき

ということで狼と香辛料1巻感想でしたー。今は東京の友人宅で久々に酒を飲まされ真っ赤になりながらあとがきを書いています。。。

最近物語の面白さには3種類あるのかなと思っていて、

1.エンターテイメント性

2.感動

3.言葉

です。1は手に汗握るスリリングな展開ってやつ。G線上の魔王なんかはそうでしたね。2はその言葉の通り。G線上だとラストの京介が刑務所に面接に来た皆を嘘で追い返すシーンはPCにしがみつきながらおいおい泣きました。3は上の引用のように思考のトリガーを引かれる言葉との出会い。あるいは大切にしたいと思う言葉。想いに溢れた言葉。感想を書きたい!と思うのは特に3が多い場合ですね。狼と香辛料はそれが多かったので感想を書いた。SAOやG線上は1的な面白さはあったけど3が少なかったので感想を書くモチベーションが湧かなかったり。

私お酒ほんと弱いみたいで、氷結1缶飲んだだけでもう真っ赤っかです。こんなに赤くなるのは才能だとまで言われました。氷結はアルコール度数が高いので半分くらいでちょうどよく酔えそう。今度エロゲやるときに使ってみようかな。

ではではー。