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ゆらのふなびと

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『ローゼンメイデン』 2巻 感想 ~これは僕の問題なんだ!

『ローゼンメイデン』 マンガ アニメ

 

ローゼンメイデン 2 (ヤングジャンプコミックス)

 

大きな掌に、気づいていないだけ

 

私は幾つもの私になるーー

 

違う! これは僕の問題なんだ!

 

 

TALE6 記憶

 

  「記憶」ーーこの言葉には、忘れてしまいたい辛い記憶と、忘れたくない大切な記憶、両方の意味が込められている。

 

作ってしまえばいい

 

お前だけの人形をーーー

 

「僕だけの…

 

人形…!!」

 

 まかなかったジュンは、まいたジュンになりすました雪華綺晶にそそのかされる。まかなかったジュンの「過去を変えることで今も変えられたら」という後ろ向きな希望、そして、自分の世界を変えてくれる「ローゼンメイデン」というきっかけへの他力本願さがくすぐられている。

 

(わかってるって そんなこと)

 

彼女だって 僕の側の人間じゃない

 

(前にもあったな こんな感覚)

 

僕の側に属する人間なんてどこにもいない

 

異端なのは僕の方ーーー

 

(だめだ…戻らない

 

なんで僕はこんななんだろう

 

早く…戻……)

 

 何をしていようと、時々襲ってくる孤独感。この感覚が来ちゃったときはすぐに止めるしかない。ジュンもそう心得ているようで。でも、そう簡単にふっきれる感情でもなく。

 

≪世界を変えるんだろう?≫

 

ああ 変えたいよ

 

もうたくさんだ

 

あの感覚を繰り返して生きるのは

 

世界に

 

切り捨てられていく

 

あの感覚ーー

 

 1巻の「疎外感」とリンク。

 

努力して大学に行ったって変われなかったんだ

 

じゃあこの先何十年と続く人生は…?

 

できる奴 できない奴

 

成功する奴 何やっても失敗する奴

 

世の中は不公平だ

 

どうして僕は何も持たずに生まれてきたんだ…

 

……… ダメだ また

 

あの感覚にーー

 

 自分の人生に希望なんてない。そこに望みを生むにはどうしたらいいんだろう?

 

「不思議ね

 

なぜ人は出来事を文字に残すのかしら」

 

「そりゃあ…忘れていっちゃうからじゃないのか

 

記憶だけじゃ死んだときに消えてなくなるし

 

誰かに伝えても 伝え続けていくうちに先細っていくのは確かだし」

 

「そうね もし誰も覚えている人がいなくなってしまったら

 

それは最初から起きていないのと変わらなくなるのかも

 

それでもジュン

 

私が今貴方の膝に座っているという事実は変わらないわ

 

いつか私もジュンも消えてなくなり

 

世界中に忘れられたとしても

 

今この時間は確かに存在したのだわ

 

覚えていてジュン

 

もし私が消えてなくなったとしても

 

貴方が作ったお人形のことを

 

この真紅と貴方が共に過ごした時間を

 

 「ここは分岐の可能性を失った世界」と言った昨日の反動か、真紅はまかなかったジュンにも優しい言葉をかける。あと数日で消えてしまうが故の発言でもある。「覚えている人がいなくなったら、なかったことになる」という部分は、旧シリーズの「呼んでくれる声に気づけなければ、ここにいないのと同じ」という言葉に重なる。「忘れないで」という言葉には、「人は在りし日の人形遊びを忘れていく」という言葉を思い出す。

 

(旧7巻)

 

人は成長するわ

 

子どもは在りし日の人形遊びを忘れていく

 

やがては老いて土に眠るけれど

 

人形は人形のまま… 朽ちて土へと還るの

 

私たちは人形で ジュンは人間よ

 

いくら深い思いでつながったとしても

 

その事実は変わらない

 

あの子は年を重ね変わっていくでしょう

 

心も体も 見える世界もすべて

 

 

くだらないな

 

全部どうだっていいよ

 

早く帰りたい

 

「クソめんどーなんで とっとと直しましょう」

 

 現実に希望がないと、何もかもどうでもよくなってしまうもので。無関心と無気力が加速していくのかもしれない。それは店長の言った「成長しないから人生を楽しめない」ということでもある。

 

≪ミラクルなんてねーから≫

 

「ごめん…もう帰っていいかな?

 

前も今日も 僕はただ早く帰りたかっただけだから

 

巻き添え食うの嫌だったし

 

劇団のことは 単なる下心だったし

 

≪どうでもいい≫

 

親切とかとは……違うから……」

 

≪どうにでもなれーーー≫

 

 「彼女も僕の側の人間じゃない」「誰も僕の側の人間なんていない」その疎外感が「どうにでもなれ」という気持ちを加速させる。希望が薄くなってくると「諦め≫希望」になって、そうするとどんどん卑屈・投げ遣りになってしまうんだろうなあ。

 

ジュ…… 桜田くん

 

……い… いい人…だね

 

だってさ… 帰りたかったなら 責任ないことだし

 

置いて先に帰るっていう選択肢もあったのに(店長みたいに)

 

そうしない時点でそれはもういい人だよね……

 

お兄ちゃんが言ってたよ

 

大道具の仕事がすごく丁寧だったって

 

やりたくてやってる事じゃなくても真剣に取り組める奴はなかなかいないって

 

さっきのスリップの事で私にもわかったよ

 

結論としてジュンくんはやっぱり

 

下心いじょーに

 

頼りがいがあって優しい人だと思うよ

 

 太字のとこは本筋とはそれるけどいい言葉だなーと。ジュンの優しさは水銀燈への接し方にも表れていて、媒介になれと脅してくるなんて相当ヤバいんだろうとか、交換条件として真紅のカバンで寝ろとか、意外と相手に気づく子だったりする。「ドールの扱い方がうまいのはどっちも同じね…」と真紅に言わしめたほどに。

 

ねえホーリエ 知っていて?

 

あの子は自分が思っているよりも

 

ずっと広い掌を持っているの

 

重く大きな扉を開ける掌を

 

まいたジュンとは違うそれを

 

あの子は自分で拓いて自分で手に入れているの

 

まだそれに気づいていないだけ

 

そして気づいた時には

 

人形遊びの手は止めて

 

その掌で扉を開いて外に出かけていくのだわ

 

もう少しそばで見ていたかったけれど

 

ーージュン…

 

 「自分で拓いて手に入れているの」というのは、芝居へのジュンのかかわりを間近に見てのことだろうか。「とても大きな掌を持っている」「まだ気づいていないだけ」。とても優しい言葉だなあと思う。「外に出ていく」という言葉には、「私たちは見送る側」という人形の淋しさが垣間見える。

 

くだらなぁい

 

人間ってどうして茶番が好きなのかしらね

 

生きてるだけでもうお芝居でしょうに

 

 水銀燈の名言。

 

たしかにそうだな…

 

ジェームズ…キャサリンて…本気か?

 

劇団ていっても何から何まで手作りで安っぽい

 

文化祭の延長レベルじゃないか

 

斉藤さんには悪いけど…

 

なんでそこまで夢中になれるんだか…

 

(最初は僕も そんな風に思ってたかな…)

 

「でも…」

 

 「こんなことやってて意味あるんだろうか?」その問いは、楽しくってやっていれば、夢中になってやっていれば気にならなくなっちゃうもんだよ、って。

 

「勿論ですわ お姉さま

 

仲良くしましょうと差し出したこの手を

 

貴女はつれなく振り払ったんですもの」

 

「見縊るんじゃないわ白い薔薇

 

その指先の刺に気づかない私ではないの

 

 

 この巻は水銀燈のセリフが好きかもしれない。

 

妹…?

 

笑わせるんじゃないわよ 誰が妹ですって?

 

貴方は気高きローゼンメイデンなんかじゃない…

 

妹だなんて認めないわ

 

お父様に形骸(からだ)さえ与えられなかったくせに

 

ガラクタ(ジャンク)にすらなれない哀れな幻影…!

 

 水銀燈をも上回る雪華綺晶のコンプレックス。雪華綺晶はお父様に期待していない?

 

私はどこに還ればいいの…?

 

 もう一つ気になるのは、「形骸」で「からだ」と読んでいること。「いつかは朽ちゆく存在」というニュアンス?

 

「…ひとつわからない事があるわ

 

貴女は何故ローザミスティカに興味がない?

 

エーテルの体を持たず思念だけで存在する貴女は何もかもが特殊

 

けれど

 

ローゼンメイデンとして生まれた以上 望むものはひとつ

 

至高の少女となり お父様の愛を得ること

 

それは姉妹の誰もが渇望する事…

 

人間で言えば本能ということになるかしら

 

そのために必要なローザミスティカを放棄する理由は何…?」

 

「…ええ ええ 確かにお姉さま

 

お父様は私にだけ身体をくださらなかった…

 

貴女がたは 時を経て眠りを経て 形骸に留まりながら在り続ける事ができる

 

でも…私はどう?

 

こうしていくつもの糧で繋がなければ…ーー

 

形骸を持たない私は

 

存続すらできないの…

 

ローザミスティカだけ…

 

それが何になるでしょう

 

それよりも私は無機の体が欲しい…

 

ああ… 意識ならああして苗床から吸い上げればいいんですもの

 

…ああ

 

ああ… 体が欲しい

 

雛苺の無垢さも 金糸雀の愛しさも

 

真紅の気高さも

 

翠星石の烈しさも 蒼星石の切なさも

 

どんなドールにも着替えられる

 

私は幾つもの私になるーー

 

それこそが至高の少女であると

 

私は思うのです

 

 こんな願望もあるんだなーと。一つの完璧な自分を目指すよりはやりやすい方法なのかもしれない。

 ただ「存続すらできない⇒無機の体が欲しい」は「自分の存在を安定させたいから」ってことでわかるんだけど、ここからなんで「いくつもの私になる」に行くのかがわからない。

 彼女はもしかしたら、「お父様に愛されたい」という欲求以前に、「存続したい」というよりベーシックな欲求が先行しているのかもしれない。

 

 

ああ…舞台が…

 

もう芝居はメチャクチャだ

 

みんなあれだけ頑張ってきたのに…ッ

 

………

 

僕のせいだ…

 

僕だけの人形なんてーー

 

少なくとも 誰かから一方的に送られてくるものじゃない

 

≪まきますか まきませんか≫

 

ーー… 僕はいつも選ばなかった

 

いつだって送られたものを…

 

偶然手にしたものを甘受しただけだ

 

自分から選んで取りに行ったんじゃない

 

僕は間違ったんだ

 

あのドールも 間違っている

 

(僕はーー 僕にはもう 何もできないのか!?)

 

 自らの過ちに気づいたジュン。チャンスは待つものではなく自分に取りに行くものだと。しかし意識が向かう先はまだ、諦めだ。

 

TALE12 決意

 

「ジュン……そこを動いてはだめよ」

 

「言われなくたって動けない…

 

僕には何も…」

 

あの階段…僕が作った

 

ただ斉藤さんにいい顔したかっただけで

 

流れで付き合わされて…

 

≪本当は面倒くさくて馬鹿馬鹿し/こんな泥臭いサークル活≫

 

 

 

違う!!

 

 

僕が作った!

 

人形もこの舞台も…!

 

僕だって一緒に作ったんだ!

 

これは僕の問題なんだ!

 

 

真紅!

 

教えてくれ

 

僕に……

 

できることを

 

 動けなくなったジュンを襲う「あの感覚」。不快感に満ちたあの目と、黒い世界に怨嗟の文字がひた走るフラッシュバック。ジュンはその感覚が嫌だった。本当は決別したかった。そして今、ついにその一歩を踏み出したんだ。

 

世界を変えるんだろう?≫

 

ああ 変えたいよ

 

もうたくさんだ

 

あの感覚を繰り返して生きるのは

 

 雪華綺晶のそそのかしはこれだった。

 ジュンの今までの過去への願望は、「世界を変えたい」「世界に”変わってほしい”」だった。それは外に対する期待。

 でも今は違う。ジュンは自分を変えてる。世界に失望し、自分から切り離すのではないく、世界と結合し、自分の問題として立ち向かおうとしている。これだ!

 

 

 (以下:1巻から)

 

僕の居場所のない世界

 

構わないさ もうそこに期待したりしない

 

変えてしまえばいいんだから

 

この世界を 僕の手でーー

 

ここじゃない

 

ここじゃない

 

僕のいる場所は

 

ここじゃない

 

 

外に出れば何かが変わると思ってた

 

 

 場所を変えれば、自分にとっていい環境があると思っていた。蓋を開けてみて自分の満足いくものじゃなかったら、「ここじゃない」とまた逃げてしまう。

 

時間が戻せたら

 

あの頃からやり直せたら…

 

タイムスリップして過去を変えて戻ってきてみたら

 

現在が全く別世界になってみたいな展開…

 

 ジュンは「用意された理想郷」を求めていた。自分で頑張って変えてゆくのではなく、もともと自分の望むとおりになっている環境。でもそんなのは仮想的でしかなくて。「摩擦のない平面」くらい理想的であって。その理想と現実のギャップに対する閾値をちゃんと持っているか、足りないとこは自分で働きかけていけるか。それだけでぐっと、世界の価値は変わってくる気がするなー。

 

 世界に対する(外への)変わってほしいという欲求

⇒「僕の問題」として向き合う という姿勢の変化。

 

 

 

 これは結構大きな部分な気がする。今後も注目。