ゆらのふなびと

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『1984年』

BIG BROTHER IS WATCHING YOU

ビッグブラザーがあなたを見ている

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

 舞台は1984年(執筆されたのは1948年)。ロンドンを含む「オセアニア」はビッグ・ブラザーが率いる党に支配されており、食糧・生活品・嗜好品などあらゆるものは政府の管理の下で供給される。隣国との絶え間ない戦争のため人々の生活は常に困窮している。屋内屋外を問わずいたるところにはテレスクリーンと呼ばれる双方向型ディスプレイが設置され、唯一のメディアであると共に四六時中人々を監視し続けている。

 主人公のウィンストンは真理省で歴史の改変を務める党員だが、党の体制に対し疑問を持っていた。日記に自分の考えをまとめることから彼の思考犯罪は始まり、党員ジュリアとの恋、反政府組織への参加と進む。

 2人はやがて深く愛し合うようになるが、ついに思考警察に捕らえられてしまう。監獄の先でウィンストンを待っていたのは、反政府組織への参加において彼を助けた、党中枢のオブライエンだった。自説を唱えるウィンストンに対し、オブライエンは相反する二つの事柄を同時に信じる二重思考でたたみかけ、ウィンストンを党員としてのあるべき姿に教化していく。

 

意外と面白かった

 そんなこと見出しにつけるなよと、言われそうですが。一九八四年と言えば全体主義を描いた作品として有名で、政治的イデオロギーがちがちのお堅い作品かなあ私もと思っていました。呼んだ動機と言えば、アニメPSYCHO-PASSに出てきたことくらい。でも読み始めてみたら案外スムーズに読めるもので、語弊はあると思いますが単純にエンターテイメントとして楽しめました。解説に書いてあるようなことは、もう少し知識を得てからでないと面白くない。

 

引用

「かれら(思考警察)も人の心のなかにまでは入りこめない。もし人間らしさを失わずにいることは、たとえ何の結果も生みださなくとも、それだけの価値があると本気で感じられるならば、かれらを打ち負かしたことになる」(p.257 ウィンストンがジュリアとの会話で)

 印象的だったのは、最近読んだ『夜と霧』の主題とほぼ同じこの考えが登場したこと。オーウェルがこの考えにどんな結末を用意したのかは、ぜひご自分の目でお確かめいただきたい。

自由とは二足す二が四であると言える自由である。

その自由が認められるならば、他の自由はすべて後からついてくる。

(ウィンストンが日記に書いた言葉)

秘密を守りたければ、自分自身にも隠しておかなければならない。

(p.435 監獄で眠りながらジュリアの名を叫んでしまった時)

 

 

   イギリスでは「読んだふり本」第1位に輝いたこともあるという本書。450ページ超の大作だが、飽きずに読ませてくれるストーリー。